■
AJAXに注目--グーグルが最新ウェブアプリ開発に選んだ「旧技術」
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20082580,00.htm
AJAXに注目--グーグルが最新ウェブアプリ開発に選んだ「旧技術」 Paul Festa(CNET News.com) 2005/04/11 16:57 Trackback (6) 一部のウェブ開発者らが、古くからある技術を利用して未来のウェブを構築するレースに勝とうとしている。 Microsoftのような業界大手や新興企業など、各社がウェブ経由でデスクトップライクなアプリケーションを提供するための新しいシステムを考案し続けている。しかし、検索大手のGoogleでは異なる道を選択した。同社は旧来の技術を利用して「Google Maps」や「Gmail」といった最新アプリケーションを構築した。 Googleのこの動きを受けて、開発者らはJavaScriptやDynamic HTMLといった1990年代からある技術を見直し始めた。 「突然、Googleのような企業が、エンドユーザーに莫大な利益をもたらすウェブベースのリッチアプリケーションを大衆に提供し始めた」と、Laszlo Systemsという新興企業の最高技術責任者、David Temkinは述べている。同社の開発したウェブアプリケーションは、EarthLinkの新しいウェブメールシステムに使われている。「Google Mapsと他の地図サイトとの違いは、些細なものではない--Google Mapsは全く別のカテゴリに属する製品だ。またGmailについても同じことが言える」(Temkin) こうした旧来の技術--スクリプト言語のJavaScriptや、World Wide Web Consortium(W3C)が推奨するカスケーディングスタイルシート(CSS)、そして他のコーディングの付加的機能など--は、Dynamic HTML(DHTML)と一括りにされることもある。 こうした技術への関心は、ネットバブル時代への懐旧の念から生まれたものではない。これらの旧来の技術は、必要なタスクをカバーするのに十分なうえ、一般的なウェブブラウザですでにサポートされていると、支持者らは主張している。 Adaptive Pathというサンフランシスコにあるコンサルティング会社の共同設立者Jesse Garrettは、2月18日に公開した自らのエッセイのなかで、自由に利用可能な技術でウェブアプリケーションを構築する方法として「Asynchronous JavaScript + XML」を使うというアイディアを売り込むために、「AJAX」という略語を新たに作り出した。これに関して、多くの開発者らが自らのブログに意見を書き込んでいる。 AJAXという造語にけちをつけるブロガーも少なくない。また、Googleのエンジニアらは彼らのコーディングテクニックを単に JavaScriptと呼んでいる。しかし、「AJAX」はわずか1カ月の間に市民権を得て、それに関する話がWall Street Journalに載るまでになった。 「ふだんは新しい略語があまり好きではないが、このAJAXの概念が普及し始めていることは喜ばしいと感じている」とYahooのプラットフォームエンジニアリンググループのプロダクトマネージャー、Toni Schneiderは述べている。Schneiderは、Yahooが昨年買収したOddpostで最高経営責任者(CEO)を務めていた。「JavaScriptを利用して、それを次のレベルに高める、というわれわれが長年取り組んできたことに、誰かが名前をつけたのだ」(Schneider) 現行世代のウェブブラウザで機能する技術が、強力でスケーラブルなウェブアプリケーション開発に実際に十分役立つものだとすると、それがLaszlo Systemsの開発するツールをはじめ、MacromediaのFlashやFlexベースの製品、Sun MicrosystemsのJavaベースアプリケーション、そしてMicrosoftが計画しているXAML(Extensive Application Markup Language)ベースのシステムやAvalonグラフィックスなどへの需要減少につながる可能性がある。 Microsoftは過去10年にわたり、自社の中核となるオペレーティングシステム(OS)およびデスクトップアプリケーション事業を脅かす潜在的脅威としてウェブと争ってきたが、そんな同社にとって、これは特に大きな利害の絡む問題だ。 Microsoftが開発したいくつかの技術は現在開発者らによって再評価を受けているが、同社は自らのXAML計画に対して脅威となるものはないとしている。 「われわれが20世紀末に公開したこれらの技術に、開発者らが今になって熱心に取り組んでいることには、ややがっかりしている」と、 Microsoftのプラットフォーム技術担当ゼネラルマネージャー、Charles Fitzgeraldは述べている。「しかしXAMLは全く別の部類のものだAJAXでつくったアプリケーションは、ごちゃごちゃとしていてデバッグが非常に困難だ。なかには非常に感動的なものも見られるが、しかしXAMLが解決しようとしている事がらを見れば、XAMLが非常に大きな前進であることが分かるだろう」一番簡単なのは何か 議論の1つは、結局のところJavaScriptや他のDHTML技術は、1つのアプリケーションの存在期間を通じて新システムよりも開発を簡単にしているのか、それともより複雑にしているのかということだ。 他の方法の支持者のなかには、HTMLはハイパーテキスト文書の構築を目的に設計されたものなのに、インタラクティブなアプリケーションの開発に急ごしらえ的に使いまわされていると指摘する者もいる。そのため、開発上の困難や互換性の問題が増えたり、品質確認の作業がいっそう困難になったり、高レベルの組立て部品が存在しない、などの問題が生じると彼らは主張している。 「GmailやGoogle Mapsのようなアプリケーションを構築するのは、本当に、本当に難しい」とMacromediaのプラットフォーム製品担当ゼネラルマネージャー、 David Mendelsは言う。「Googleには非常に優秀な人材が集まっている--たとえば、同社が雇ったAdam BosworthはMicrosoft在籍時にDHMLを発明した人物だ。Googleの真似をできる企業などほとんどない」(Mendels) 1990年代に登場したウェブの技術が2005年になってようやく人気を得ている理由には、こうしたレベルの難しさが関係しているのかもしれないと、 Burton GroupのアナリストPeter O'Kellyは述べている。同氏によると、これらの技術に対する新たな関心は「賢いアプローチが最近利用され始めたことや、ベースとなる技術をマスターするのがことのほか困難だったことなどによる」という。 過去の技術を活用するアプローチを擁護しているのは、Googleだけではない。W3Cでは現状の技術を好む感情から内部で分裂が起こり(http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20080776,00.htm)、Web Hypertext Application Technology Working Group(WHAT-WG)という分派がW3Cの「Xforms」というウェブフォーム--ウェブベースアプリケーションの重要なコンポーネントの1つ--のビジョンに反対して、現在広く普及している様々なテクニックを標準化するため、独自の仕様草案を作成している。 WHAT-WGには、Apple ComputerやOpera Software、Mozilla Foundationなど各ブラウザの開発元が参加している。ちなみに、JavaScriptを発明したのは、Mozillaのワーキンググループ代表であるBrendan Eichだ。WHAT-WGはまた、JavaScriptやHTML、CSS、W3CのDocument Object Model(DOM)などを組み合わせて、1つのウェブページの各部分でスクリプトを機能させるウェブアプリケーション仕様の開発も行っている。 Microsoftは、プロプライエタリなウェブとWindowsのアプリケーションコーディングシステム「XAML/Avalon」の計画を進めているが、この計画が成功すれば標準の手法がないがしろにされるおそれがある。WHAT-WGは、こうした潜在的脅威に対応することなどを目的に昨年結成されたものだ。 「Microsoftは、彼らが達成しようとしていることの概要を発表した。同社はマークアップ言語を用いてアプリケーションを構築できるようにすることを目指している」と、Opera SoftwareのCTO、Hakon Wium Lie(http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000050150,20081948,00.htm)は述べている。同氏はW3C諮問委員会の同社代表を務めており、WHAT-WGの創立者の1人でもある。「われわれは既存のウェブ言語を使って同じことができると考えた。また、AmazonやHotmailやGoogleの検索サービスなどのアプリケーションもこうした言語で書かれたものだ。ならば、そのための仕様があってもよいではないか」(Wium Lie) JavaScriptやHTMLを使う利点の1つは、Flash開発者や他のシステムのスペシャリストに比べ、経験を積んだ開発者の数が多いことだと支持者らは言う。Flashは広く普及しているものの、ウェブブラウザほど一般的ではない。また開発者のなかには、クライアントが Flash互換性のないファイアウォールに苛立っているという者もいる。 また、様々なものを組み合わせて利用している開発者もいる。たとえば人気オンライン写真サイトのFlickrでは同じページ内の一部タスクにFlashを、別のタスクにJavaScriptを使用している。 前のページ | 2 / 3 | 次のページ 一過的な流行なのか 次世代のウェブアプリケーション技術の開発に取り組む技術者たちは、JavaScriptの復活により未来のビジョンが脅かされるとの考えを笑い飛ばし、むしろ勢いに乗るGoogleのおかげで彼らも勢いづいていると主張する。 「Googleは、あれほどのスケールで多数の人々にサービスを提供している企業としては、異例の冒険をしている。古いインフラのある他の企業では、ああしたことができるという可能性さえ知らないようなことをフロントエンドでやっている」とLaszloのTemkinは言う。「私はGoogleがこうした道を選択したことを非常に喜んでいる。なぜなら、ウェブベースのリッチアプリケーションに関して、われわれから見れば途方もなく明白なことを、 Googleは市場に対して実現するよう迫っているからだ。同社のおかげで、ポータルなどはそこにある価値に注目せざるを得なくなっている。われわれにとって、これは実にすばらしいことだ」(Temkin) Googleは同社の標準ベースのアプローチに対するイデオロギー的傾倒を一切否定している。同社はそれまでにすべての選択肢を評価したとしており、新たな技術が利用可能になったり、既存の技術が洗練されるなどすれば今後もあらゆる選択肢の評価を行っていくと述べている。 Googleは、JavaScriptのアプローチについて、至らない部分がいくつかあることを認めている。たとえば、このアプローチでは、サードパーティ製品とのアプリケーション統合がいっそう困難になっている。 しかしGoogleは結局、「JavaScriptは十分機能する」という重大なプログラミング上の判断を下したという。 「われわれは他の技術も検討したし、一部の他の選択肢についても検討したが、今のところこれらの技術は乗り換えの必要性が感じられる段階にない」と、Gmailプロジェクトを率いたGoogleのエンジニア、Paul Buchheitは述べている。 「AvalonやMozillaのXUL(拡張ユーザインターフェース言語)などが強化されて十分普及するようになれば、われわれもそれに関心を持つだろう」(Buchheit) 結局、JavaScriptや他のDHTML技術から離れようとする動きは、いずれも他の選択肢の改善というよりはアプリケーションの需要から出てくるものになるだろう。 「Googleは、まだ第1歩か2歩めを踏み出したところであり、終点に達したわけではない。WordやExcel、Powerpointに取って代わるものは、こうしたやり方では構築されないだろう。そんなことが起こるとはちょっと考えられない」(Temkin) 原文へ(http://news.com.com/2100-1032_3-5621010.html) 前のページ | 3 / 3 |
1 / 3 次のページ